かぐや姫の物語。

 公開初日に見に行きました。
 話はかぐや姫そのものなんだけど、見終わるとかぐや姫という人物に対する印象が変わる。
 映画館を出る頃には、そういう人がいたような気がする、これは「風立ちぬ」もそうだった。
 たぶん、高畑勲さんがずっと続けてきたことだと思うんですがじっくり進んでいく話には見応えがあったし、現代性があったと思います。
 自分としてはディズニー作品の「お姫様」に対する一つの回答にも見えました。 
 長編アニメーションの原点として「白雪姫」という作品があるとすると、お姫様と王子様という男女の関係性が中心にあるんだけど、お姫様というのは王子様と結ばれた瞬間に特別な存在でなくなる。
 お姫様の自立の話だったのに、王子様が登場した瞬間に個人の自立という部分が抜け落ちてしまう気がして、高畑さんの作品にはそれに反する部分があるんじゃないかと。
 初見の印象としては、ジブリで高畑勲さんが作った作品の中でも特に見やすい印象を受けました、長編映画の時よりもTVシリーズの高畑さんの作品を見た時に似た感触。
 笑えるところは笑えるし、自分以外の劇場の反応もかなり良かったです、子どもたちも笑っていました。
 個人的に面白かったのはかぐや姫が求婚に来た人たちに無理難題を押し付ける長回しのカット。
 これだけの大人数をワンカットに入れ込んでて、一人一人ポーズをとってシルエットで変化をつけるってすごい難しいことを日本画風の平面パースでやってるんですけど、普通に笑える感じになってるのが凄いなと。
 日本アニメとしては特殊な画面で作られた作品ですけど、キャラクターの色にムラがないせいか普通のセル画系の絵柄のアニメとそんなに印象が違った気がしなかったかな。
 線描としては数年前から、特に最近になって鉛筆の描線を強調した作品が何本か出てきているのでそれと比べて効果的だったかどうかという評価になると思う。
 見た感じ、日本画風というよりは鉛筆のムラの個性のほうが強いので鉛筆画としてのイメージのほうが強いと思った、いわさきちひろさんの絵に近いものがあると思う。
 かぐや姫が竹から出てくる所の光がモノトーンの点描のように描かれているのが面白くって、その後もこういう面白い表現が出てくるのかなあと思ってみていたんだけど、特にそういうことはなくそこだけだったのは少し残念だった。
 この部分が特殊だったのは、この作品の特殊な画面が光を描くのに向いていなかったからなのではと思う。
 この作品では、画面の一部の背景が基本的に白く飛んでいるので白色=光という単純な質感のマチエールとしての法則が使えない、この作品を見て改めてそれがセル画的な絵柄の特性だったことに気付かされた。
 他にも透過光などの撮影効果を使うのも難しいだろうと思う、光というのはアニメの中でも難しい部類の表現で、この作品を通して見た事で、改めてセル画的なアニメの快感や面白さ、またある種の限界に気づけたと思う、そういう意味でもこの作品を見れて良かった。
 といっても、画面が白く飛んでいるのは演出的な側面が強いのかもしれない。
 作品を通して全体的に画面から空の青色を抜き出していて、終盤かぐや姫が山に帰った所から青空も色づき、最後は真っ暗な宇宙でかぐや姫が青い地球を見つめながら去っていく。
 かぐや姫にとっての特別な何かを象徴するものとして「色」が存在しているわけだ、徹底した作品だと思う。
 動きに関してもどこを抜き出しても、上手かった。そして、どの動きも作品の一部として抜き出せないよう徹底して作品の肉体の一部として機能していたように思う。
 すべての技術が一つの作品を形作るためだけに生きている。日本的なアニメの特性をなくした上で一から技術を作って、また使いきっている。
 精巧な技術が組み合わさって一つの模様になる、寄木細工のようなムダのない技術の美しさを感じた。
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by Yakeishi-ni-Mizu | 2014-01-05 01:12

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